暑い空気が蔓延する季節でも

それでも変わらず、冷え切った瞳で、忌々しげに空を仰ぎ見る。

 

最初の挨拶から、帰りの挨拶まで

彼は視線を合わせてわせてはくれなかった。

 

今日もまた、そんな”冷え切った瞳の彼”が帰ろうとする。

しかし帰れない。

 

数刻前から始まった暴風雨

こんな天気では帰路にはつけない。

 

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???

『…バイバイってさ、僕は嫌いなんだよ。』滅多に口を開かない彼が独り言のように呟く。

 

私は思わず、尋ねてしまった。

『なんでなの…?』と

 

ひどい雨音の中でも彼は私の声が聞き取れたようだ。

 

『 バイバイの…その瞬間のサヨナラが、本当に最期の挨拶になってしまうって、…そしてそれはいつ何時おきてもおかしくはないってことを知ってるから…かな?』

最後に疑問系でこちらへ返した彼の表情は、若干はにかんでいた。

 

私はただ『そうなのか』としか返すことができなかった。

 

そして再び無言

雨もいっこうに止みそうにない。

 

沈黙に耐えかねて今度は私から話しをふった

『…どうして…今までほとんど誰ともかかわろうとしなかった貴方が、そんな話しを私にするの…?』と恐る恐る。

 

彼は一考した後に

『きっとこんな天気だからだよ』と

まるで他人事のように言った後に彼は雨の中へ飛び込みずぶ濡れになりながら走り去った。